小宮山宏著、東洋経済新報社、2011年6月16日発行、定価:本体1,500円+税 ISBN978-4-492-39551-6
この本は、著者がITpro EXPO 2011のキーノート講演で、「省エネは回収できる投資である」と語ったことに触発されて購入した。確かに日本企業は、エアコンや冷蔵庫の省エネ化に開発投資をしてもそれを上回る儲けを出してきた。自動車の排気ガスのクリーン化や燃費の向上も規制があるからそれをクリアするために研究開発投資をしたのだが、それが世界最高水準の品質を生み出し、商売として成り立っている。
この本ではいろいろなことが指摘されているが、そのひとつがイノベーションの余地とは「理論」と「現実」の差であるということである。理論的に求められる限界に対し現実の製品の省エネがどこまで進んでいるか?その差が大きい製品には今後イノベーションがおこるということで、どの分野にイノベーションの可能性があるかを探るヒントになると感じた。
DRAMや現行の携帯電話や液晶テレビなど、日本はコモディティ化した製品では国際競争力を失っている。その原因は、製品が生まれて次第にみんながその製品を作れるようになる段階で、世界市場を視野に入れ巨大シェアを取ることを目指して巨大投資を行うことをしてこなかったためであると著者は指摘している。日本国内に複数のメーカがあり製品の種類も多い場合には、製造数量が世界市場とは2桁から3桁小さく価格競争にはならないから勝てないとの指摘である。
次に取り上げた指摘は、「幸せな加齢の五条件」である。それによると、1栄養、2運動、3人との交流、4新しい概念の受容性、5前向きな思考、の五条件が満たされれば健康に加齢することができるという。日本では70~80歳の高齢者のうち70~80%は健常者であるそうなので、この高齢者パワーを社会で活かすことが必要との指摘だ。
最後に取り上げる指摘は、日本は第二次世界大戦に負けた後、欧米を目標に懸命に働き1960年代の終わりにはGDPで世界第二位の経済大国になった。この時点で日本の目標は消えてしまったはずだった。欧米にキャッチアップする途上国型の発展モデルから先進国型モデルに移行しなければならなかったにもかかわらず、その転換が行われずに日本は足踏みしてしまった。失われた40年である。先進国型モデルにはお手本がないので、日本は自ら課題を設定し、解決していかなければならないとの指摘である。
著者が主催するプラチナ社会研究会というサイトがあり、そこには「2050年への政策ビジョン」も掲載されているので、今後の産業の発展の方向性を考える上で、この本とともに参考になると思います。
